出られない部屋ってあるだろ? そう、それ、なんとかかんとかしないと出られないな部屋~ってやつ。
あれ、俺入ったことあるんだよね。
あ! やっぱ違う違う、入ったことないわ。いやいや、二人で入って出されたお題をこなすってやつじゃなくってさ、あれって政府が仕組んでるんじゃないかって言われてるやつだろ?
そういう感じじゃなかったんだよな、そもそも俺一人だったし。
ただの“出られない部屋“に入ったんだよ。
あれは俺が顕現して少し経ったくらいだだったかな。やっと人の体に慣れてきたころだったと思う。
なんだったけな、倉庫? 書庫? うちって古い書類も普段使わないものも一まとめにしまってるからなんて言ったらいいかわかんないんだけど、まあそういう部屋に行ったんだよ。
理由? 忘れっちまったよ、そういやこんな部屋あったな、なんか面白いもんないかなとかふらっと入っちゃったんだと思うぜ。何か頼まれたとかそういう理由じゃなかったよ。だって俺、結構長い時間その部屋に閉じ込められてたんだぜ。何か頼まれてその部屋に行ったんなら、長く戻ってこないなら誰かしら探しに来るだろ? そういうの全然なかったんだよな。だからたぶん、自分の意思でたいした理由もなくその部屋に入ったんだよ。
目当てのものを手にしたのか部屋を見るのに満足したのか出ようとしたら入り口閉まってんだよ。開けっぱなしにしてたはずなのに。え? なんで開けっ放しだったって断言できるかって? 無意識に閉めてたんじゃないか? 俺がちゃんと扉を閉めるような性質に見えるか? 毎回毎回開けたら閉めろって怒られてるからな、この時も閉めてるわけないよ。
話を戻すな。まぁ、その時は戸閉めたっけな? くらいに考えてたんだけどさ。出ようと思って手をかけたらさ、戸が動かないんだよ。おかしいよな? さっきは普通に開いたんだぜ? 普段だってそうさ、あの部屋の戸、別に歪んでて動きが悪いとか立て付けが悪くて開け閉めに苦労するとかなかったんだよ。今だって普通にスルッと開く。まぁ、その時はあれっ? 閉めたっけな? て思って深く考えずに戸を開けようとガタガタ動かしてたんだけどよ。でもさガタガタ言わないんだよ。わかる? どんなに開かない戸っつてもさ、少しは動くじゃん? ガタガタって。なんつーかさ、微動だにしないんだよ、全然。この時はまだおれ、ちょっとおかしいなー、アレェ? くらいの感じだったんだけどさ。
やっぱり全然動かない。どんだけ必死に力を込めても開かない。ここでやっとちょっと変な気がした。だって俺刀剣男士だぜ? 普通の人間よりずっと腕力がある。人間の規格に合わせて作ってある建物の戸が、その俺が全力を込めても動かないっておかしいもんな。
ちょっとゾッとしたけどすぐにおさまった。ハハァ、これって“例の部屋”だな。さっき言ってた“出られない部屋”だよ、噂にはきいてたからさ。そんならなんかお題があってそれを達成すれば出られんだな! ってさ。入ってるのは俺一人だけど、まぁそういうのもあるだろって。お題とやらを探し始めた。目につくところにはなかったから棚の中なんかも探したよ。でもない。しまってある箱の中とかさ、書類の隙間とかそこらじゅうひっくり返して探したよ。でもお題なんて出てこなかった。手紙とかそういう形を想像してたけど、なんか変わった形なのかな? とも思ったけどさ、そういう意味が読み取れるものは一切なかった。えーっ、そういのじゃないんならなんで開かないんだよ! もうお手上げだったね。
別に命に差し障りがあるってわけじゃないけどさ、出られないのは困るし、なんか気持ち悪いなー、どうしようかなーって、だんだん不安になってくるじゃん。こんな八方塞がりな状況だと。
戸壊して出られなかったのかって? そん時は思いつかなかったなー。俺さー主と約束してたしな。いや、俺顕現してすぐ力加減がわかんなくてさ色々壊しちゃって。ドアノブ取れちゃったり、鴨居に頭ぶつけて壊したりしてさ。主に本丸を壊さないように気をつけてって約束してたから壊してでも出るってのは気が引けるよ。戸だって自分の仕事こなしてるだけだしな。
それで今度こそ出られなくて困っちゃたわけだよ。でもまぁ、そのうち誰かしら気付いて見つけてくれるだろうと思って気長に待つことにしたんだよ。昼寝でもしようかと思ったけど横になるには狭いし、その辺に適当に腰掛けてさ。棚に並んでるものをぼんやり見て過ごしたよ。蝉がジーワジーワ鳴いていたのが妙に耳に残ってるな。ぼーっとしてるとさ、汗が滴になってつたうのがよくわかるよ。あれ、気持ち悪りぃな。結構待ったような気がするんだけどさ、誰も来ないんだな。本丸には誰かしかいるはずなのに、ずーっと蝉の鳴き声しか聞こえなくて俺しかそこにいないような気がしたよ。永遠にここから出られないんじゃないかってな。
ひとのからだってしんどいな? 槍だったときは俺ずっと蔵の中で過ごすの平気だったのに、たったの数時間、いや数十分でそんなこと考えちまったんだ。
暑いのもきついし、汗は気持ち悪いし。
ゾッとしたよ。
そうこうしてたら誰かの足音がする。近づいてきたんだな。
やった! でられる!! って思ったね。
おうい、だれか開けてくれよーって声をかけたんだけど、気づいてないみたいだった。
今度はもっと大きな声で呼び掛けた。おうい!! って。外にいるやつはまるで聞こえてない風に行っちまったよ。
それから何振りか誰かが通り掛かって、何度も声をかけたけどまるで聞こえてないみたいだった。
戸を叩いてもだめ。
外を誰かが通り過ぎるたびにさ、話し声がするんだよ。内容はなんでもない世間話だよ。でもさぁ、これだけ俺な助けを求めてもまるで届いていない。まるで俺が存在していないみたいでさ、恐ろしかったよ。たまに聞こえる笑い声がこんなに近い距離なのにやけに遠くの世界に思えてさ。人の体がなかった頃はなんともなかったのにな。
そうしてうなだれているうちに夜になって、やっと戸が開いた。夕食の時間になってもやってこない俺を探しに来てくれたんだな。
天の助けだと思ったよ。顕現して初めておいおい泣いちまった。このなりでちょっと恥ずかしいな。
他の刀からは呆れられちまった、お前、そんなところで何してんだって。俺がどんだけ閉じ込められて出られなかったんだっつっても外からはスッと開けられたわけだしな。ちょっと訝しがられたよ。夢でも見てたんじゃないかって。
俺も不思議だったけどその後はなんともなく過ごしてたんだよ。でもしばらくしたらまた閉じ込められた。
今度はあの倉庫じゃなかった。どっか適当な空き部屋だったかな。
念のため、ただ建て付けが悪くて引っかかってるだけかと確認したけどやっぱり開かない。ちょっとギョッとしたね、またかよ! って。
まぁ今回は前回ほど慌てなかったし落ち着いてたよ。二回目だし、前にあんなことがあったからさ、主からもしまた同じようなことがあったら遠慮せずに扉を壊して出て来いって許可をもらってたんで。
一応、本当に開かないか確認してえいやっと壊そうとしたら、目が覚めた。布団の中だった、夢だったんだよ。
それ以来さ、忘れた頃にどっかの部屋に閉じ込められるわけだよ。で、目が覚めてみると夢だった、てわけ。
今はあんたがいるからそうでもないけど、いつでもちょっと恐ろしいわな。また閉じ込められるんじゃないかって。
隈の濃い御手杵の語った話。
あれ、俺入ったことあるんだよね。
あ! やっぱ違う違う、入ったことないわ。いやいや、二人で入って出されたお題をこなすってやつじゃなくってさ、あれって政府が仕組んでるんじゃないかって言われてるやつだろ?
そういう感じじゃなかったんだよな、そもそも俺一人だったし。
ただの“出られない部屋“に入ったんだよ。
あれは俺が顕現して少し経ったくらいだだったかな。やっと人の体に慣れてきたころだったと思う。
なんだったけな、倉庫? 書庫? うちって古い書類も普段使わないものも一まとめにしまってるからなんて言ったらいいかわかんないんだけど、まあそういう部屋に行ったんだよ。
理由? 忘れっちまったよ、そういやこんな部屋あったな、なんか面白いもんないかなとかふらっと入っちゃったんだと思うぜ。何か頼まれたとかそういう理由じゃなかったよ。だって俺、結構長い時間その部屋に閉じ込められてたんだぜ。何か頼まれてその部屋に行ったんなら、長く戻ってこないなら誰かしら探しに来るだろ? そういうの全然なかったんだよな。だからたぶん、自分の意思でたいした理由もなくその部屋に入ったんだよ。
目当てのものを手にしたのか部屋を見るのに満足したのか出ようとしたら入り口閉まってんだよ。開けっぱなしにしてたはずなのに。え? なんで開けっ放しだったって断言できるかって? 無意識に閉めてたんじゃないか? 俺がちゃんと扉を閉めるような性質に見えるか? 毎回毎回開けたら閉めろって怒られてるからな、この時も閉めてるわけないよ。
話を戻すな。まぁ、その時は戸閉めたっけな? くらいに考えてたんだけどさ。出ようと思って手をかけたらさ、戸が動かないんだよ。おかしいよな? さっきは普通に開いたんだぜ? 普段だってそうさ、あの部屋の戸、別に歪んでて動きが悪いとか立て付けが悪くて開け閉めに苦労するとかなかったんだよ。今だって普通にスルッと開く。まぁ、その時はあれっ? 閉めたっけな? て思って深く考えずに戸を開けようとガタガタ動かしてたんだけどよ。でもさガタガタ言わないんだよ。わかる? どんなに開かない戸っつてもさ、少しは動くじゃん? ガタガタって。なんつーかさ、微動だにしないんだよ、全然。この時はまだおれ、ちょっとおかしいなー、アレェ? くらいの感じだったんだけどさ。
やっぱり全然動かない。どんだけ必死に力を込めても開かない。ここでやっとちょっと変な気がした。だって俺刀剣男士だぜ? 普通の人間よりずっと腕力がある。人間の規格に合わせて作ってある建物の戸が、その俺が全力を込めても動かないっておかしいもんな。
ちょっとゾッとしたけどすぐにおさまった。ハハァ、これって“例の部屋”だな。さっき言ってた“出られない部屋”だよ、噂にはきいてたからさ。そんならなんかお題があってそれを達成すれば出られんだな! ってさ。入ってるのは俺一人だけど、まぁそういうのもあるだろって。お題とやらを探し始めた。目につくところにはなかったから棚の中なんかも探したよ。でもない。しまってある箱の中とかさ、書類の隙間とかそこらじゅうひっくり返して探したよ。でもお題なんて出てこなかった。手紙とかそういう形を想像してたけど、なんか変わった形なのかな? とも思ったけどさ、そういう意味が読み取れるものは一切なかった。えーっ、そういのじゃないんならなんで開かないんだよ! もうお手上げだったね。
別に命に差し障りがあるってわけじゃないけどさ、出られないのは困るし、なんか気持ち悪いなー、どうしようかなーって、だんだん不安になってくるじゃん。こんな八方塞がりな状況だと。
戸壊して出られなかったのかって? そん時は思いつかなかったなー。俺さー主と約束してたしな。いや、俺顕現してすぐ力加減がわかんなくてさ色々壊しちゃって。ドアノブ取れちゃったり、鴨居に頭ぶつけて壊したりしてさ。主に本丸を壊さないように気をつけてって約束してたから壊してでも出るってのは気が引けるよ。戸だって自分の仕事こなしてるだけだしな。
それで今度こそ出られなくて困っちゃたわけだよ。でもまぁ、そのうち誰かしら気付いて見つけてくれるだろうと思って気長に待つことにしたんだよ。昼寝でもしようかと思ったけど横になるには狭いし、その辺に適当に腰掛けてさ。棚に並んでるものをぼんやり見て過ごしたよ。蝉がジーワジーワ鳴いていたのが妙に耳に残ってるな。ぼーっとしてるとさ、汗が滴になってつたうのがよくわかるよ。あれ、気持ち悪りぃな。結構待ったような気がするんだけどさ、誰も来ないんだな。本丸には誰かしかいるはずなのに、ずーっと蝉の鳴き声しか聞こえなくて俺しかそこにいないような気がしたよ。永遠にここから出られないんじゃないかってな。
ひとのからだってしんどいな? 槍だったときは俺ずっと蔵の中で過ごすの平気だったのに、たったの数時間、いや数十分でそんなこと考えちまったんだ。
暑いのもきついし、汗は気持ち悪いし。
ゾッとしたよ。
そうこうしてたら誰かの足音がする。近づいてきたんだな。
やった! でられる!! って思ったね。
おうい、だれか開けてくれよーって声をかけたんだけど、気づいてないみたいだった。
今度はもっと大きな声で呼び掛けた。おうい!! って。外にいるやつはまるで聞こえてない風に行っちまったよ。
それから何振りか誰かが通り掛かって、何度も声をかけたけどまるで聞こえてないみたいだった。
戸を叩いてもだめ。
外を誰かが通り過ぎるたびにさ、話し声がするんだよ。内容はなんでもない世間話だよ。でもさぁ、これだけ俺な助けを求めてもまるで届いていない。まるで俺が存在していないみたいでさ、恐ろしかったよ。たまに聞こえる笑い声がこんなに近い距離なのにやけに遠くの世界に思えてさ。人の体がなかった頃はなんともなかったのにな。
そうしてうなだれているうちに夜になって、やっと戸が開いた。夕食の時間になってもやってこない俺を探しに来てくれたんだな。
天の助けだと思ったよ。顕現して初めておいおい泣いちまった。このなりでちょっと恥ずかしいな。
他の刀からは呆れられちまった、お前、そんなところで何してんだって。俺がどんだけ閉じ込められて出られなかったんだっつっても外からはスッと開けられたわけだしな。ちょっと訝しがられたよ。夢でも見てたんじゃないかって。
俺も不思議だったけどその後はなんともなく過ごしてたんだよ。でもしばらくしたらまた閉じ込められた。
今度はあの倉庫じゃなかった。どっか適当な空き部屋だったかな。
念のため、ただ建て付けが悪くて引っかかってるだけかと確認したけどやっぱり開かない。ちょっとギョッとしたね、またかよ! って。
まぁ今回は前回ほど慌てなかったし落ち着いてたよ。二回目だし、前にあんなことがあったからさ、主からもしまた同じようなことがあったら遠慮せずに扉を壊して出て来いって許可をもらってたんで。
一応、本当に開かないか確認してえいやっと壊そうとしたら、目が覚めた。布団の中だった、夢だったんだよ。
それ以来さ、忘れた頃にどっかの部屋に閉じ込められるわけだよ。で、目が覚めてみると夢だった、てわけ。
今はあんたがいるからそうでもないけど、いつでもちょっと恐ろしいわな。また閉じ込められるんじゃないかって。
隈の濃い御手杵の語った話。